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人間工学を活かしたものづくりの情報発信ブログ

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【その行動は作業か娯楽か】日常に見る様々なユーザー視点

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物があふれる現代、それを使う人(ユーザー)も多様化しています。

 

ある人にとっては良いと判断されたことが、別の人にとっては良くないと判断されることもあります。

 

今回は、日常の出来事について、それが作業なのか、娯楽なのかユーザー視点で考えてみました。

 

 

 

 

食事

人が栄養を摂ることは、生きるために必須の事です。

 

大昔は、生きるための手段としての食事という意味合いが大きかったのではないかと思います。

 

しかし、時代とともに食事の在り方も変化してきました。

 

楽しみや娯楽としての食事

現代で、食事の雰囲気や料理の味を楽しみたいという方は多いのではないでしょうか。

 

レストランや居酒屋など飲食店は、それらをサービスとして提供しています。

 

顧客はサービスの対価として料金を支払います。

 

また、以前紹介させていただいたムース食は、流動食と違い、料理の見た目や風味を考慮してつくられています。即ち、食事を楽しみたい方へのサービスとなると思います。

ergonomics.hatenablog.com

 

栄養を摂る手段としての食事

対して、現代でも、生きるための手段としての食事という考え方も存在すると思います。

 

単に栄養が摂れると良い、できる限り早く済ませたいと考える方も多いのではないでしょうか。

 

サプリメントはたくさんの種類があり、必要な栄養を手軽に補給できますよね。

 

流動食や点滴もこちらの分類だと思います。

 

入浴

入浴も、上述の食事と同様に、時代の変化とともに考え方も多様化してきています。

 

楽しみや娯楽としての入浴

お風呂に入ると気分が開放的になり、ストレスも発散されますよね。

 

温泉や銭湯、入浴剤も開放的な気分をサービスとして提供してくれます。

 

以下の記事でも検討しましたが、入浴もまた、毎日の楽しみとなっている方も多いと思います。

ergonomics.hatenablog.com

 

身体を綺麗に保つ手段としての入浴

入浴が面倒だと思っている方も多いのではないでしょうか。

 

お湯を張って、服を脱いで、髪や体を洗うとそれなりに時間がかかりますよね。

 

「カラスの行水」でありたい方も多いと思われます。

 

1970年の大阪万博では、以下の「人間洗濯機」が展示されていたようです。

www.nikkei.com

 

お風呂を楽しみたい人にとっては楽しみが奪われ、考えられないものかもしれませんが、時短や入浴介護が求められる現代では、需要があるのではないかと思います。

 

 

 

散髪

髪は切らないと伸びるものですが、切るのを楽しむか、作業とするか。

 

こちらは、理容室か美容室かの違いの側面が大きいかもしれません。

 

髪型や雰囲気を楽しむための散髪

アシンメトリーツーブロックなど、流行の髪型というのが存在するようになりました。

 

また、美容室もあちこちにでき、眉カットやマッサージなど様々なサービスが提供されています。

 

数カ月、数週間に1度の散髪に楽しみを求めている方も多そうです。

 

伸びた髪を切るための散髪

一方で、前回のカットから伸びた分を切って、元に戻してほしいという方も多いと思います。

 

散髪が面倒で、髪が伸びなければ良いのに、と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

理容室は美容室と比べて安価であり、単に素早くカットをしてほしいという要望に応えていることもあります。

 

サンキューカットは私も利用したことがありますが、急いでいる時や、安く済ませたいときには重宝します。

www.3qcut.com

 

交通手段

移動するために使う交通手段は、飛行機や新幹線、電車やフェリー、車、自転車、徒歩など色々あります。

 

これらも移動手段とするか、移動も楽しみとするかでとらえ方も様々です。

 

道中の景色や会話を楽しむ交通手段

移動中に絶景が見えるとテンションがあがりますよね。

 

特に、飛行機や新幹線、フェリーは手厚い顧客サービスがあり、かなりリラックスして移動することができます。

 

徒歩にすることで、道中の会話が増えたり、移動の自由度が増したりもします。

 

各手段で、各々楽しみ方がありますね。

 

移動手段として

できることならば、目的地までワープしたい…と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

とにかく、早く・安く済ませたいという考えがある中、最近ではLCC(格安航空会社)が出てきて、顧客の要望に応えていることがうかがえます。

 

まとめ

今回は、食事・入浴・散髪・交通手段の4つで、求めるものが異なるユーザー視点を考えてみました。

 

多様化するユーザーの視点・要望に対して、各々に対応するサービスが存在することも改めて知ることができました。

 

ものづくりをする際には、常に多様なユーザーがいることを考えながら、様々な視点を持つことが重要だと感じました。

【誤操作しても事故にならない】Excelの機能はヒトにやさしい?

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ミスをして大損害を引き起こしてしまった…!

 

業務上でミスをすることは人間誰しもあると思います。

 

その際に、大きな損害になるか、損害を抑えられるかは、人がミスすることを見越しているか否かによって変わってきます。

 

仕事やプライベートでExcelを使う方は多いのではないでしょうか。

 

Excelでも、操作を誤ってしまうことは誰しもありますが、それでも大事に至らない設計になっています。

 

普段あまり意識することがない、失敗にも寛容なExcelの機能について誤操作の視点から検討してみました。

 

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失敗に寛容なExcelの機能

ファイルの保存

ExcelPowerpointなどのOffice製品ですが、保存する際に、「×ボタン」を押下し、保存するか否か聞かれたのちに保存する方は多いのではないでしょうか?

 

実際に、「上書き保存」や「名前を付けて保存」をしたのちに×ボタンを押下すると、

保存するか否か聞かれません。

 

×ボタンを先に押して保存するか、先に保存して×ボタンを押すかの違いですね。

 

いずれも処理結果は同じです。

 

もし、×ボタンを押して保存されずにデータが消えると…せっかく作成したデータが消えてしまう、もしくは途中保存した状態に戻ってしまい、大変な損失になりますよね。。。

 

本当に閉じても良いか、閉じる際には保存をするか、念入りに聞いてくれるのは、ありがたいです。

 

ファイルの自動保存と復元

Excelには、上記のように、保存のボタンを押さずとも、自動で保存してくれる機能があります。

 

外的な要因により、意図せずにファイルが消えてしまった場合、全てが消えると大損失ですよね。

 

自動保存で保存された箇所からファイルを復元できるのも役に立ちます。

 

 

元に戻す

こちらも多くの方が多用している機能だと思います。

 

誤って入力、変更した際に、操作を取り消して、元の状態に戻してくれる機能です。

 

もし、この機能が無かったら…文字や数式を入力しなおしたり、セルの編集や図の挿入も再び行わなければならなくなります。

 

この機能があることで、大幅に作業時間の短縮ができていると考えられます。

 

まとめ

このような、失敗しても取り返しのつかないことにならないことは、様々な場面において重要なことです。

 

もちろん、失敗を未然に防ぐことは重要です。

 

以下記事では、ヒューマンエラーの防止策について検討しています。

ergonomics.hatenablog.com

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しかしながら、いくら策を講じてもヒューマンエラーは起こり得るものです。

 

エラーや誤操作が生じた際に、どれだけ被害を軽くできるかということは、モノやシステムをデザインする際に常に意識していきたいことです。

【年寄り扱いするな!】スティグマ(汚名)問題とデザイン

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スティグマ」という言葉を聞いたことがありますでしょうか?

 

あまり聞きなれない言葉ですが、今回はデザインと絡めて紹介したいと思います。

 

 

 

 

スティグマとは

スティグマStigma)は、日本語で汚名、不名誉、烙印という意味があります。

 

特に、人の信頼をひどく失わせるような属性を表します。(Goffman,1963)

 

さて、このスティグマですが、私たちの身の回りにも問題が存在するシーンがあります。

 

スティグマ問題の例

老人ホームに入居する際に

内閣府の介護に関する世論調査によりますと、「自宅で介護を受けたい」と回答した方の割合が多いことが分かります。

survey.gov-online.go.jp

 

老人ホームに入ることで、「老人」と認定される感じがあることも、入居をためらう1つの要因ではないかと思います。

 

「老人ホーム」という響きが、当事者にとって負の感情を抱くものであれば、そこに属したくないという気持ちからスティグマ問題があると考えることができます。

 

バスや電車でお年寄りに席を譲る際に

座席が埋まっているバスや電車で、お年寄りの方に席を譲った経験がある方は結構いらっしゃるのではないでしょうか?

 

そういったとき、素直に受け入れて席に座る方もいれば、大丈夫ですと断っている方もいると思います。

 

その際に、「年寄扱いされるのが嫌だ」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。

 

「優先席」になると、なかなか進んで座りづらいと感じる方も多そうですね。

 

「優先席」という言葉自体、高齢者や体が不自由な方が座るところですというサインになり得ます。

 

車いすや歩行器、杖などの補助器具を使用する際に

自ら進んで車いすや歩行器を使いたいという方はほとんどいませんよね。

 

ましてや、これらの器具での補助が必要な時でも、使うのを嫌がる方も多いのではないでしょうか。

 

これらの製品には、負のイメージがあることも、利用が渋られる原因の1つかもしれません。

 

利用する際には、周りから見た際に器具が分かりやすく、「ここに障がい者がいます」というサインを発することにもなります。

 

以下記事では、「しょうがいしゃ」の表記について検討しましたが、いずれの表記でも、個人のとらえ方次第では負のイメージがあるかもしれません。

ergonomics.hatenablog.com

 

製品の見た目を改善すると良いか

最近は、デザイン性に凝ったおしゃれな製品がたくさん出てきています。

 

メガネは、視力が低い方への補助器具である反面で、度が入っていないものもあり「ファッションの1つ」というとらえ方も広がってきています。

 

杖も、身体が不自由な方への補助器具である反面、ファッションとしてのステッキが流行したこともありました。

 

しかしながら、歩行器等はまだまだ補助器具である見た目のものが多いと感じます。

 

もし、見た目ですぐに分からないような補助器具が出てくると、このようなスティグマ問題は解決されるかもしれません。

 

まとめ

年齢を重ねて、身体的な機能が落ちてくることは仕方がないことです。

 

しかしながら、精神的な部分は常に成長を続けるものだと思います。

 

色々な経験から、知識や見聞を得て、内省する機会も多いでしょう。

 

対して、若い人は、失敗を恐れずに挑戦し続ける体力があります。

 

これらを混合することで、スティグマ問題を解決するようなデザインが出来上がるのではないかと思います。

 

私の職場にもシニア世代の方が数名いらっしゃいます。

 

良いデザインを発想するヒントが眠っているかもしれないため、積極的に協力していきたいものです。

 

参考文献

誰のためのデザイン? D.A.ノーマン著