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【小さな改善が大きな革新へ?】漸進的・急進的イノベーションとは

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会社に入ったら世の中をあっと言わせるこういう商品を開発したい!

こういう技術で困っている人を助けたい!

 

学生の頃、特に就職活動をする頃に、誰もが夢を持って働くことを思い描いているでしょう。

 

しかし、いざ入社して働いてみると、小さな改善や開発しかしていない。

 

もっと大きなことをしたいのに…と思う方もいるのではないでしょうか。

 

入社数年間は、会社を知って業務に慣れる期間でもあるため、大きな経験ができないということもあるかと思います。

 

しかし、ずっとこのままではどうだろうか?夢が実現できるだろうか?

 

ある程度業務を経験すると、こういったことを考えますよね。

 

 

 

 

イノベーションの2つの形態

そんなことを思う中で、私の愛読書である「誰のためのデザイン?」(D.A.ノーマン)の中に、製品のイノベーション(技術革新)の形態について、著者の考えが記載されていました。

 

製品のイノベーションには2つの形態がある。

1つは自然でゆっくりとした進化的プロセスをたどる。(漸進的)

もう1つは急進的な新規開発によって達成される。(急進的)

イノベーションというと急進的な大きな変化だと思いがちだが、最もよくあるのは、小さくて漸進的なものである。

 

以上の考えを、上述した就職前後の思いで考えてみますと…

 

就職前に思い描いているような、想像がしやすく目で見て分かりやすい大きな変革は、急進的なイノベーションになると思われます。

 

就職後に経験する、小さな改善や開発は、漸進的なイノベーションになるかと思います。

 

自動車のイノベーションの例

同書の中には、自動車のイノベーションの例が示されていました。

 

ベンツの自動車は急進的なイノベーションであった。

最初のアメリカの自動車会社はデュエリーであるが、2,3年しか続かなかった。

ベンツの自動車自体は急進的であったが、導入以来、持続的にゆっくり着実に改良。

今日の自動車が、快適で安全で、それほど高くないのは漸進的な増強のおかげ。

 

確かに、今日の自動車は多くの人が手軽に入手でき、役立っています。

 

この背景には、多くの自動車メーカーが長年重ねてきた改良があったものだと思うと、漸進的なイノベーションの重要さが分かります。

 

まとめ

同書では、「急進的なイノベーションは生活と産業を変え、漸進的なイノベーションはものごとを良くする。どちらも必要だ。」と言っています。

 

普段行っている物事の小改善も、積み重ねることで大きなイノベーションになり得ると感じました。

 

少々思い悩んだ際に、こういったことを考え見ると更にやる気が出てきますね!

【脳が文章を補正?】タイポグリセミア現象とは

脳が文章を補正する?タイポグリセミア現象とは

 

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みさなん こちんには

さそっく ですが うえがのぞう は なんと かあている か よめすまか?

 

ん?何かおかしいですかね?

 

よくよく見てみると、でたらめな文章になっていることが分かると思います。

 

しかし、なんとなく読めてしまったのではないでしょうか?

 

これは、タイポグリセミア(Typoglycemia)現象と呼ばれています。

 

 

 

タイポグリセミア現象とは?

タイポグリセミア現象とは、文章中の単語で、最初と最後の文字以外の順番が入れ替わっても、正しく読めてしまう現象のことです。

 

これまでの経験から、脳が単語を予測し、瞬時に補正して読むことができてしまいます。

 

上述の例で文章を正しく書いてみると、以下のようになります。

 

修正前(タイポグリセミア)

みさなん こちんには

さそっく ですが うえがのぞう は なんと かあている か よめすまか?

 

修正後(正しい文章)

なさん こんにち

っそく ですが うえのがぞう は なんと かいてある か よめますか?

 

なぜ、こういったことが起きるのかということについては、科学的には解明されていないようです。

 

経験により補正されるということですので、ひらがなを覚えたての子供では、この現象が起きないかもしれませんね。

 

タイポグリセミアが発生する条件

日本語の文章でタイポグリセミアが発生するには、いくつか条件があります。

 

①各単語の文字数を4~6文字にする

②3文字以下の単語は並び替えない

③各単語は、ひらがな、カタカナ、漢字のいずれかに統一する

④読み手が知らない言葉は使わない

 

前述した文章も、この条件をもとに作成しました。

 

広告への活用例

このタイポグリセミア現象を調べていると、富山県の老舗どら焼き店「中尾清月堂」の広告が出てきます。

 

商品であるどら焼きをリニューアルした際に、同現象を取り入れた広告を展開し、10日間で5万9200個を売り上げたようです。

 

このように、広告戦略にも活用され、成果を出しています。

 

私たち人間の生態については、まだまだ知られていないことがたくさんあります。

 

改めて、人間の特性を知り、商品に展開することは、面白いことであり、重要なことだと感じました。

【猫を電子レンジに入れても】ユーザーは誤使用だと気づかない?

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客「洗濯機が動かなくなったのですが…」

 

担当者「これはここのボタンを押して動かせるものです」

 

客「ちゃんと動きました!でもそういう使い方は知らなかったです」

 

企業のお客様センターにはこういった問い合わせも多いのではないでしょうか。

 

実際には壊れていないが、ユーザーが使い方を誤っているケースです。

 

このようなことがなぜ発生し得るのか、考えてみました。

 

 

 

ユーザー自身が誤使用に気づいていないことが原因の1つ

店に売ってある電化製品は、取扱説明書が付いており、特定の使われ方を想定しています。

 

しかし、製品が購入され、ユーザーのもとへ行くと、使われ方は十人十色です。

 

基本的な使い方は、説明書通りであることが多いですが、製品が置かれた環境、ユーザーの状況などにより、微妙に変わってくるでしょう。

 

ここで「電子レンジ猫訴訟」と呼ばれた話を思い出しました。

 

濡れた猫を乾かすために、電子レンジの中に入れて温めたところ、死んでしまいました。

 

「電子レンジに猫を入れてはいけないということが、取扱説明書に書いていない」

 

…というところから、メーカーを訴えたというお話です。

 

PL法(製造物責任法)の説明の際にもよく出てくるお話ですね。

 

この例は極端ですが、普通に考えると誤使用だと分かりそうなことでも、ユーザー全員が分かっていることではないということを企業側が認識することが重要だと感じます。

 

「使いにくさ」は誤使用が原因となっている?

私は行うことによって左利きであったり、右利きであったりします。

 

例えば、文字を書くことや、ラケットを使う球技は右です。

 

お箸を持つことや、ボールを投げるのは左です。

 

そのような中の小学校時代、左利き用のハサミを買い与えられましたが、右手で使っていました。

 

すると、薄い紙1枚でも全く切れない…。

 

別のハサミ(右利き用)に変えてみると簡単に切れる。

 

自分のハサミは壊れているんだろうと思い、結局使わなくなりました。

 

後々になり、「左利き用のハサミ」が存在することを知り、これを右手で使うと切れないようになっているということ知りました。

 

このように、使いづらさを感じた際には、誤使用が原因となっている可能性もあります。

 

まとめ

物が増えてきた現代、ユーザーも多様化しており、ユーザーの行動も複雑怪奇なものとなっています。

 

開発の段階で、想定される使い方をより多く検証することが、誤使用を防ぐことに貢献するものだと改めて感じました。