ヒトにやさしく

人間工学を活かしたものづくりの情報発信ブログ

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【様々なユーザー】について考えてみる

ユーザーって何だろう?

 

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ユーザーとは

 

ユーザビリティ、ユーザーエクスペリエンス、という言葉にも含まれる、「ユーザー」

 

ユーザーにとっての使いやすさ考えるためには、対象のユーザー像を明確にする必要があります。

世の中に存在している多くのシステムや製品には、不特定多数のユーザーが存在しています。

そのユーザーは、「個人」として見ることもできれば、「グループ」として見ることができる場合もあります。

社内システムであれば、特定の社員(個人)、社員全員(グループ)、もしくは特定の部署の社員(グループ)がユーザーになり得ます。

 

そして、それらユーザーは直接ユーザーと間接ユーザーに分けることができます。

各々以下のように定義します。 

 

・直接ユーザー

製品やシステム、サービスと直接的に相互作用する人

 

・間接ユーザー

製品やシステム、サービスと直接的には相互作用を行わないが、その出力を受け取る人

 

この2つのユーザーについて、実際に駅の改札の例を考えてみます。

 

 

駅の改札のユーザー例

 

直接ユーザー

・乗客(駅の利用者)

駅の改札のユーザーと言って、最初に思いつくのが実際の駅利用者かと思います。

電車から降りてくる人とこれから電車に乗る人。

いずれも改札に切符を通す、もしくはICカードをかざします。

改札と直接かかわっていますので、直接ユーザーになります。

 

・現場の駅員

現場にいる駅員は、改札でトラブルがあった際に、直接操作をしますので、直接ユーザーと言えます。

 

・メンテナンス業者 

改札のシステムでトラブルがあった際に対応してくれる業者も、改札(の機械の中)を直接操作するため、直接ユーザーと言えます。

 

 

間接ユーザー

・鉄道社員

直接改札システムにはかかわらないが、改札から利用者数等の情報を受け取る鉄道社員は、間接ユーザーと言えます。

 

ICカード会社

鉄道社員と同様に、ICカードの情報を受け取る会社も間接ユーザーと言えます。

今ではほとんどのICカードで共通利用ができるようになり、多くの企業間が連携しています。

 

その他、下記のようにシステムの周辺に存在する人も広義の意味ではユーザーと呼べるのかもしれません。

 

・駅構内の店員

・清掃員

・駅の近隣住民

 

 システムや製品をつくる際には、このように幅広く存在するであろうユーザーに目を向けることが重要です。

更には、ユーザーの多様性も理解したうえで、モノづくりに励みたいものです。

 

以下記事で、同様に駅の改札を例にして、ユニバーサルデザインを紹介しています。

ergonomics.hatenablog.com

 

【誰でも花壇を楽しめる】レイズドベッドのユニバーサルデザイン

誰でも時には自然と戯れたいもの。

 

足腰が弱い人や、車いすユーザーは、目線の高さにある自然は感じることができますが、「かがんで」地面に触れるのは難しいことです。

外出した際に、「一緒に」自然を楽しみたいものです。

 

そこで、レイズドベッドという言葉をご存じでしょうか?

 

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レイズドベッドとは

レイズドベッド(Raised Bed)は、直訳すると「揚げ床」。

園芸の分野では、地面の一部をレンガやブロックで囲い、その中に土を敷き詰めた植栽のためのスペースのことを言います。

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レイズドベッドの例

ガーデニングの分野では、家庭菜園を鑑賞し、より楽しむものとして、広まっています。

イギリス生まれのレイズドベッドですが、日本でも自作したり、商品化されていたりと人気を博しています。

おしゃれな観賞用というだけではなく、花壇が高くなることで通気性が確保され、水はけがよくなり、野菜づくりも楽しめます。

 

ユニバーサルデザインのポイント

なぜ、レイズドベッドがユニバーサルデザインかといいますと、作り方次第では、以下のメリットがあるためです。

 

車いすに乗ったまま花壇を楽しめる

・立ったまま花壇を楽しめる

 

車いすに乗ったままだと、低い位置にある花壇の植物には手が届きにくいです。

花壇を高い位置に持ってくることで、立っていながら、もしくは車いすに座っていながらにして花壇との距離が近くなります。

そのため、植物を近くで見ることができます。視力が悪い人に対しても優しいですね。

更には、香りを感じたり、土を触って園芸を楽しめます。

このように、人間の五感を使って存分に楽しむことができると思われます。

こういったことから園芸療法に繋げることもできそうですね。

 

設計上のポイント

車いすが動作することを考えると、足元のスペース(蹴込み)を広く設ける必要があります。

車いすの高さも各々であるため、高さを調整できると仕様の幅が広まります。

また、介助者や他の利用者とコミュニケーションがとれるように、近くにベンチもあると周囲の雰囲気もより明るくなりそうです。

 

このレイズドベッドですが、家庭用のほか、公園や街中など、多くの人が利用する場所で取り入れられているようです。

www.shinken-kogyo.co.jp

 

このように、誰もが自然に触れることができるような作りであることから、ガーデニングの分野で注目されているレイズドベッドの中に、ユニバーサルデザインの考えを感じました。

 

【病院での会話漏れ】スピーチプライバシーを保護するサウンドマスキング

病院内での会話が他の人に聞こえる?

 

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こんなことがありませんか?

病院の受付カウンターで症状を伝えたり、薬を受け取る際に、近くにいる人に自身と看護師さんの会話が聞こえているのでは、という心配がありませんか。

病院内は静かですが、会話の中で多くの個人情報が聞こえる場所でもあります。

カーテンで仕切られた病室では、隣の会話が丸聞こえなんてこともありますね。

 

医療現場で想定される個人情報を含む会話

病院や薬局、学校の保健室などの医療の現場では、他の人には聞かれたくないような個人情報が飛び交います。

 

例えば下記のようなもの。

 

・病院の受付で他の人の病名や説明

・病院の診療室で隣り合ったベッドの会話

・薬局のレジで他の人が購入した薬名や説明

・学校の保健室で他の人の会話

 

これらの会話ですが、別の音を被せることで周りに聞こえづらくすることが可能です。

 

サウンドマスキング効果

コロナ禍で「マスク」という言葉は、日常でもあふれかえっていますが、音に関してもマスクという言葉があります。

ある音を、別の音を被せて聞こえづらくすることを「マスキング」と呼びます。

 

例1.電車のホームでの会話音

駅のホームで会話をしている時に電車がホームに入ると、会話の音は電車の音にかき消されて聞こえづらく(もしくは全く聞こえなく)なるとこがありますよね。

これも一種のマスキング効果です。

電車の音によって会話の音がマスクされています。 

会話の音に対して電車の音が大きい程、マスキングの効果は高まります。

 

例2.MP3の圧縮技術

MP3は、音楽ファイルの容量を削減するために圧縮をする技術であり、聞きなれている方も多いのではないでしょうか。

実はこれもマスキング効果が活用されています。

同程度の高さの音の場合、高い音は低い音によってマスクされやすいことが知られています。

音楽の場合、様々な高さの音が聞こえますが、低く大きな音の次に高く小さな音がくると、後者の音は聞こえなく(聞こえにくく)なります。

この聞こえなくなった音を取り除いても、人の感じ方は変わらないだろう…ということから容量を小さくすることができます。

 

応用するには

医療現場に応用するには、スピーカーから音を出すことで会話の漏れを防ぐことができます。

ただし、環境に合わない大きな雑音だと不快です。

人が日常的に聴いても不快にならない音を選定する必要があります。

マスキング効果を高めるには、同程度の高さの音を用いるのが良いため、人の声の周波数に近い音を選ぶと良いでしょう。

また、音量もあまり大きすぎずに、聴いていて心地よい音が良さそうです。

 

下記のような技術が既に実用化されています。

sound-solution.yamaha.com

 

 

以上のように、病院やレストラン、オフィスで意識することなく流れている小さなBGMも、スピーチプライバシーの保護に寄与していると考えられますね。