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【脳が文章を補正?】タイポグリセミア現象とは

脳が文章を補正する?タイポグリセミア現象とは

 

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みさなん こちんには

さそっく ですが うえがのぞう は なんと かあている か よめすまか?

 

ん?何かおかしいですかね?

 

よくよく見てみると、でたらめな文章になっていることが分かると思います。

 

しかし、なんとなく読めてしまったのではないでしょうか?

 

これは、タイポグリセミア(Typoglycemia)現象と呼ばれています。

 

 

 

タイポグリセミア現象とは?

タイポグリセミア現象とは、文章中の単語で、最初と最後の文字以外の順番が入れ替わっても、正しく読めてしまう現象のことです。

 

これまでの経験から、脳が単語を予測し、瞬時に補正して読むことができてしまいます。

 

上述の例で文章を正しく書いてみると、以下のようになります。

 

修正前(タイポグリセミア)

みさなん こちんには

さそっく ですが うえがのぞう は なんと かあている か よめすまか?

 

修正後(正しい文章)

なさん こんにち

っそく ですが うえのがぞう は なんと かいてある か よめますか?

 

なぜ、こういったことが起きるのかということについては、科学的には解明されていないようです。

 

経験により補正されるということですので、ひらがなを覚えたての子供では、この現象が起きないかもしれませんね。

 

タイポグリセミアが発生する条件

日本語の文章でタイポグリセミアが発生するには、いくつか条件があります。

 

①各単語の文字数を4~6文字にする

②3文字以下の単語は並び替えない

③各単語は、ひらがな、カタカナ、漢字のいずれかに統一する

④読み手が知らない言葉は使わない

 

前述した文章も、この条件をもとに作成しました。

 

広告への活用例

このタイポグリセミア現象を調べていると、富山県の老舗どら焼き店「中尾清月堂」の広告が出てきます。

 

商品であるどら焼きをリニューアルした際に、同現象を取り入れた広告を展開し、10日間で5万9200個を売り上げたようです。

 

このように、広告戦略にも活用され、成果を出しています。

 

私たち人間の生態については、まだまだ知られていないことがたくさんあります。

 

改めて、人間の特性を知り、商品に展開することは、面白いことであり、重要なことだと感じました。

【猫を電子レンジに入れても】ユーザーは誤使用だと気づかない?

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客「洗濯機が動かなくなったのですが…」

 

担当者「これはここのボタンを押して動かせるものです」

 

客「ちゃんと動きました!でもそういう使い方は知らなかったです」

 

企業のお客様センターにはこういった問い合わせも多いのではないでしょうか。

 

実際には壊れていないが、ユーザーが使い方を誤っているケースです。

 

このようなことがなぜ発生し得るのか、考えてみました。

 

 

 

ユーザー自身が誤使用に気づいていないことが原因の1つ

店に売ってある電化製品は、取扱説明書が付いており、特定の使われ方を想定しています。

 

しかし、製品が購入され、ユーザーのもとへ行くと、使われ方は十人十色です。

 

基本的な使い方は、説明書通りであることが多いですが、製品が置かれた環境、ユーザーの状況などにより、微妙に変わってくるでしょう。

 

ここで「電子レンジ猫訴訟」と呼ばれた話を思い出しました。

 

濡れた猫を乾かすために、電子レンジの中に入れて温めたところ、死んでしまいました。

 

「電子レンジに猫を入れてはいけないということが、取扱説明書に書いていない」

 

…というところから、メーカーを訴えたというお話です。

 

PL法(製造物責任法)の説明の際にもよく出てくるお話ですね。

 

この例は極端ですが、普通に考えると誤使用だと分かりそうなことでも、ユーザー全員が分かっていることではないということを企業側が認識することが重要だと感じます。

 

「使いにくさ」は誤使用が原因となっている?

私は行うことによって左利きであったり、右利きであったりします。

 

例えば、文字を書くことや、ラケットを使う球技は右です。

 

お箸を持つことや、ボールを投げるのは左です。

 

そのような中の小学校時代、左利き用のハサミを買い与えられましたが、右手で使っていました。

 

すると、薄い紙1枚でも全く切れない…。

 

別のハサミ(右利き用)に変えてみると簡単に切れる。

 

自分のハサミは壊れているんだろうと思い、結局使わなくなりました。

 

後々になり、「左利き用のハサミ」が存在することを知り、これを右手で使うと切れないようになっているということ知りました。

 

このように、使いづらさを感じた際には、誤使用が原因となっている可能性もあります。

 

まとめ

物が増えてきた現代、ユーザーも多様化しており、ユーザーの行動も複雑怪奇なものとなっています。

 

開発の段階で、想定される使い方をより多く検証することが、誤使用を防ぐことに貢献するものだと改めて感じました。

 

【当事者意識の重要性】障がい者、障碍者、障害者 どれが良い?

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今年の東京パラリンピックでは、たくさんの選手が活躍されていました。

 

同時に、様々な「障がい」を持った方がいることも分かります。

 

報道でたくさん目にする「しょうがい」という言葉。

 

「障がい、障碍、障害」のように色々な文言が使われることがあります。

 

実際どのように表記するのが良いのか、考えてみました。

 

 

 

 

どのように記載するか実際に決まりはない

以前は、「障害」が使われることが多かったですが、最近は「障がい」をよく見かけるようになりました。

 

しかしながら、国や自治体が出す表示は、「障害者手帳」、「障害者スポーツ」のように、必ずしも全てが平仮名に置き換わっているわけではありません。

 

国が出すような明確な決まりというものは無いようです。

 

ただし、自治体によって決まりがある場合があります。

 

例えば以下のように、都道府県の告知情報の表記についても検討・実施されています。

www.pref.mie.lg.jp

www.pref.tokushima.lg.jp

 

障害者から障がい者になった背景

さて、「障害者」と記載されてどいういったことを感じるでしょうか?

 

色々なサイトの情報や文献を読みますと、害という文字のイメージが悪く、平仮名で記載するようになったということが述べられています。

 

害という文字が使われる場面を挙げてみますと…

 

公害、害虫、被害…というマイナスのイメージの言葉を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

 

当事者の方から、こういった要望があったため、平仮名表記の「障がい者」記載が普及していったようです。

 

また、「障碍者」という記載に関しては、「碍」という文字が常用漢字ではないことから、用いられにくいという背景もあるようです。

 

障がい者の中でも意識は様々

障がい者」という記載になったことで、全ての障がい者の方が満足しているわけではありません。

 

以下は、NHKの調査資料です。

https://www.nhk.or.jp/bunken/research/kotoba/pdf/20200401_3.pdf

 

当事者団体へ聞き取り調査を行っていますが、社会的な不利は、社会のバリア(障壁)によって生じるものであり、それを象徴する「障害」という表記を変える必要はないという意見もあります。

 

このように、正解がないため、状況や環境により、臨機応変に対応していくことが求められそうです。

 

当事者なしでの議論にならないことが重要

このような議論をする際に、障がい当事者を抜きにして議論することがないように注意しなければならないと感じました。

 

有識者だけが集まり、何らかの見解が得られたとしても、それは当事者に受け入れられないことも多いと思います。

 

ものづくりにおいても同様のことが言えます。

 

実際のユーザーの意見を取り入れず、企業や担当者の一人よがり的な商品は売れません。

 

ものを売る側、決め事を決める側は、当事者の声に耳を傾けることが重要だと感じました。