「スティグマ」という言葉を聞いたことがありますでしょうか?
あまり聞きなれない言葉ですが、今回はデザインと絡めて紹介したいと思います。
スティグマとは
スティグマ(Stigma)は、日本語で汚名、不名誉、烙印という意味があります。
特に、人の信頼をひどく失わせるような属性を表します。(Goffman,1963)
さて、このスティグマですが、私たちの身の回りにも問題が存在するシーンがあります。
スティグマ問題の例
老人ホームに入居する際に
内閣府の介護に関する世論調査によりますと、「自宅で介護を受けたい」と回答した方の割合が多いことが分かります。
老人ホームに入ることで、「老人」と認定される感じがあることも、入居をためらう1つの要因ではないかと思います。
「老人ホーム」という響きが、当事者にとって負の感情を抱くものであれば、そこに属したくないという気持ちからスティグマ問題があると考えることができます。
バスや電車でお年寄りに席を譲る際に
座席が埋まっているバスや電車で、お年寄りの方に席を譲った経験がある方は結構いらっしゃるのではないでしょうか?
そういったとき、素直に受け入れて席に座る方もいれば、大丈夫ですと断っている方もいると思います。
その際に、「年寄扱いされるのが嫌だ」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。
「優先席」になると、なかなか進んで座りづらいと感じる方も多そうですね。
「優先席」という言葉自体、高齢者や体が不自由な方が座るところですというサインになり得ます。
車いすや歩行器、杖などの補助器具を使用する際に
自ら進んで車いすや歩行器を使いたいという方はほとんどいませんよね。
ましてや、これらの器具での補助が必要な時でも、使うのを嫌がる方も多いのではないでしょうか。
これらの製品には、負のイメージがあることも、利用が渋られる原因の1つかもしれません。
利用する際には、周りから見た際に器具が分かりやすく、「ここに障がい者がいます」というサインを発することにもなります。
以下記事では、「しょうがいしゃ」の表記について検討しましたが、いずれの表記でも、個人のとらえ方次第では負のイメージがあるかもしれません。
製品の見た目を改善すると良いか
最近は、デザイン性に凝ったおしゃれな製品がたくさん出てきています。
メガネは、視力が低い方への補助器具である反面で、度が入っていないものもあり「ファッションの1つ」というとらえ方も広がってきています。
杖も、身体が不自由な方への補助器具である反面、ファッションとしてのステッキが流行したこともありました。
しかしながら、歩行器等はまだまだ補助器具である見た目のものが多いと感じます。
もし、見た目ですぐに分からないような補助器具が出てくると、このようなスティグマ問題は解決されるかもしれません。
まとめ
年齢を重ねて、身体的な機能が落ちてくることは仕方がないことです。
しかしながら、精神的な部分は常に成長を続けるものだと思います。
色々な経験から、知識や見聞を得て、内省する機会も多いでしょう。
対して、若い人は、失敗を恐れずに挑戦し続ける体力があります。
これらを混合することで、スティグマ問題を解決するようなデザインが出来上がるのではないかと思います。
私の職場にもシニア世代の方が数名いらっしゃいます。
良いデザインを発想するヒントが眠っているかもしれないため、積極的に協力していきたいものです。
参考文献
誰のためのデザイン? D.A.ノーマン著